桜の季節
昨日の雨で桜が散ってしまった。
世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
昔はこの歌の意味がわからなかった。なぜこれが名句として残っているのか不思議だった。しかし今は実感としてわかる。
若い頃は、桜が咲くのが楽しみという気はなく、気がついたら咲いているという感じだった。今は、もうすぐ咲くなあ、二部咲きになった、満開はいつかなあ、散る花びらのなんと美しいことよ、醍醐桜はどうなっているのだろう、東北はまだなのか、などなど、いろんな時期のいろんな場所の桜を想う。
大学生の頃、高知城の桜と自分を白黒写真に収めた。散っていく花の中で、ちょっとおしゃれして友人と写真を撮りあったのだ。今、インスタ映えなどと言っているが、それと同じ心情だったのだと思う。自分の美しい頃を惜しむように。やがて去っていくことを知っていたから。今は自分の写真など撮ろうとは思わない。
昔読んだ絵本に、おじいちゃんおばあちゃんは、あと何回桜が見えるだろうかと思うと書いていた。これも、わかる。まだまだ死ぬ気はないが 、何が起こるかわからない人生、その時その時の桜を楽しみたいと思う。